1987年から24年間、ずっと私の傍にいてくれた小さなピアノに、先日、別れを告げました。
そんなに上手でもないくせに、子供の頃からピアノが好きで、ニューヨークに来ても、ピアノが欲しいと思った。
どうしても日本製のヤマハの新品のピアノが欲しくて、意を決してマンハッタンのピアノ屋さんに出かけ、当時の自分の予算で買えたのが、この小さなアップライトのピアノでした。
買ったばかりのときは嬉しくて、毎日のように弾いては楽しんでいましたが、段々とピアノに向かう時間も減ってゆき、最近では、滅多に触らなくなっていました。
ある日、久しぶりに蓋を開け、弾こうと思ったら、キーのひとつが調子が悪くなっていた。
頻繁に弾いてなかったから、気がつかなかった。
調律師を呼んでキーはすぐに直してもらいましたが、わたしの元でこうして家具と化してしまうくらいなら、いっそのこと、欲しいひとに売ろうと思い立ち、ある日、ネット広告に出してみました。
何人か見にきてくれて、数週間後に買い手が決まった。
そして、新しい持ち主がピアノを引き取りに来た日、なんだか急に、大事な旧友に別れを告げる時がきたような、そんな、なんとも言えない思いがせまってきました。
このピアノ・・・
24年もの間、数度の引越しもあったのに、ずっとわたしにくっついてきた。
いま、別の人の手に渡ろうとしている。
もっと大切にしてあげればよかった。もっと弾いてあげればよかったな、と。
新しく持ち主となったのは、プロのミュージシャンの方でした。アルゼンチンタンゴのピアニスト。
ピアニストの方に毎日弾いてもらえるなら、ピアノだって、きっと嬉しいに違いない。
最後にお渡しするときに、「あなたのような方が新しい持ち主になってくれて、本当によかった。わたしも、ピアノも、うれしいです。」そう彼に言った途端、なんだか、ちょっと泣けちゃいました。
そのピアニストの方は、私の涙をみて、「僕もアルゼンチンを出てくる時に、それまで使っていたピアノを手放さなくてはならなかったから、あなたの気持ちは、よくわかるよ。弾きたくなったら、いつでも家に来て。」と言ってくれた。
さようなら、わたしのピアノ。
長い間いっしょにいてくれて、本当に、ありがとう。
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3月29日、明日の火曜日、マンハッタンのウェストサイドの教会で、被災した日本のためにチャリティコンサートが開かれます。
そこで演奏するミュージシャンのひとりは、わたしのピアノを買ってくれたピアニストのオクタヴィオさんだということに気づきました。
そして、このチャリティ・コンサートには、オクタヴィオさんらの他に、もうお一方、ピアニストが登場します。
誰だと思いますか。
天平さんです。
ミクシィ日記で何度か書いた、あの中村天平さん。
(そのミクシィ日記は、こちら、です。)
天平さんのライブを最後に聞いたのは、数年前、やはりニューヨークの、クイーンズのアストリアの住宅街の中にある、小さな小さなライブハウスだった。そこでお会いしたときは、デビュー作を出されたばかりで、NYではまだ無名に近かった天平さんでしたが、いまや世界各地でコンサートを開くほど有名になられた。
わたしのピアノの新しい持ち主となったオクタヴィオさんが参加するタンゴ・トリオと、数年ぶりにその姿を拝見する天平さんが、日本のためのコンサートで共演するなんて・・・。
わたしはもちろん、聞きに行ってきますよ。
「ご縁」というのは、あるのだなぁ。
ピアノにまつわる思い出が、またひとつ、増えそうです。
こちらが、明日のチャリティコンサートの詳細です。
いつもtwitterで有益な情報、的を得たご指摘、温かなコメントを拝見しています。
先日アフリカからニ年ぶりに帰国し、今日久しぶりにピアノを弾きました。
おかしな音は一つ二つではありませんでした。
ガーナで子供達のために弾いた曲、先日なぜか銀座のワインバーで歌った曲、
小さい頃練習した曲、発表会で弾いた曲、心ゆくまで堪能しました。
ピアノにはいつも側にいて欲しいけど、
必要とする誰かのためになるならこういった選択もあるのですね。
そして音楽が繋げてくれる様々な「ご縁」は、東京、NY、そしてアフリカをも巻き込んで人々を感動させます。
音楽の素敵な輪が、チャリティコンサートを通じて被災地に届きますよう。
shokola
Posted by: Shokola1226 | 03/29/2011 at 11:29 AM
shokolaさん、あたたかいコメントありがとうございました。
Posted by: TrinityNYC (とりんち) | 03/29/2011 at 12:26 PM